新規事業のフレームワーク:テーマ設定を4つに分ける

はじめに

「新規事業のテーマをどう決めればいいのか」

事業テーマの探索を任された方から、必ずと言っていいほどいただく質問です。

顧客の声から始めるべきか、自社技術から始めるべきか、それとも市場トレンドか。

入り口が定まらないまま、議論が空中戦になってしまうチームを、私は数多く見てきました。

私はこれまで、大手電機メーカーでの新規事業提案制度の運営と、独立後の伴走支援・ハンズオン支援を通じて、支援先企業の新規事業制度の設計・アップデートに携わってきました。

その中で、テーマ設定のパターンを整理するために使っているのが、本稿でご紹介する「4分類フレームワーク」です。

入り口を型として捉えると、議論は驚くほど整理されます。

2軸で切ると、テーマ設定は4つの型に分かれる

企業内新規事業のテーマ設定は、2つの軸で整理できます。

一つは「トップダウンか、ボトムアップか」。
経営や事務局が方向づけるのか、現場の発意から生まれるのか。

もう一つは「外部起点か、内部起点か」。
市場や顧客という外の変化から始めるのか、自社の戦略やアセットという内側から始めるのか。

この2軸を掛け合わせると、4つの型が現れます。

市場機会探索型(外部×トップダウン)
市場トレンドや外部環境の変化をテーマ化する型。

経営戦略遂行型(内部×トップダウン)
中期経営計画や重点領域を起点にテーマ化する型。

顧客課題発見型(外部×ボトムアップ)
現場が顧客の課題や不満からテーマ化する型。

技術アセット活用型(内部×ボトムアップ)
技術シーズや既存アセットからテーマ化する型です。

企業内新規事業の4分類。横軸にトップダウン(経営陣)とボトムアップ(現場)、縦軸に外部(社外)と内部(社内)を取った2×2マトリクス。外部×トップダウンが①市場機会探索型、外部×ボトムアップが③顧客課題発見型、内部×トップダウンが②経営戦略遂行型、内部×ボトムアップが④技術アセット活用型

もちろん実際には、きれいに4つに分かれるわけではなく、複数の要素を併せ持つケースも多いです。

なお、トップダウンかボトムアップかの置き方も、あくまで便宜上のものです。トップダウン寄りに置いた型でも、現場や個人が外部環境の変化に着目してボトムアップで提案することはあります。逆に、ボトムアップ寄りに置いた型を、経営や事務局が号令をかけて動かすこともあります。

以前の連載コラムでアイデアの起点として「顧客課題・技術シーズ・社会課題」の三つをご紹介しましたが、この4分類はそれを制度設計の視点から捉え直したものです。

顧客課題起点は③に、技術シーズ起点は④に対応し、トップダウン側の①②を加えることで、会社としてのテーマ設定の全体像が見えるようになります。

それぞれの型に、向き・不向きがある

このフレームワークの実務上の価値は、型ごとの向き・不向きを事前に知れることです。

①市場機会探索型と②経営戦略遂行型は、「なぜ今か」を説明しやすく、経営との共通言語になりやすいのが強みです。経営戦略との整合が取りやすいため、意思決定も通しやすい。

一方で、トレンド紹介で終わりやすく、顧客課題が抽象的になりやすいという弱点があります。先週のコラムで書いた「生成AIが伸びている、だから生成AIサービスを」の危うさは、①の弱点がそのまま表に出た形です。

③顧客課題発見型は、課題を具体化しやすく、検証相手も見つけやすい。
しかし、対象市場が小粒になりやすく、経営戦略との接続が弱くなりがちです。

「良い課題だが、なぜ当社がやるのか」と問われて詰まるのは、この型の典型的なつまずきです。

④技術アセット活用型は、自社の強みを生かしやすく、研究成果の事業化にもつなげやすい反面、技術起点ゆえに顧客不在になりやすく、用途探索に時間がかかります。

私が支援した大手メーカーの新規事業提案制度のアップデートでも、この4分類を使いました。

その制度は③顧客課題発見型のボトムアップ提案が中心で、現場の熱量を生む一方、テーマの小粒化と経営戦略との接続の弱さが課題になっていました。

そこで、①市場機会探索型・②経営戦略遂行型の要素をトライアルとして組み合わせ、弱点を補完する設計を提案しました。

型を知っていれば、制度の偏りも、その処方箋も、筋道立てて語れます。

この診断は、ご自身のチームでも簡単に試せます。

過去2〜3年の新規事業テーマや提案を一覧にし、4象限のどこから生まれたかをプロットしてみてください。多くの会社で、分布ははっきり偏ります。技術系の会社なら④に、営業が強い会社なら③に寄りがちです。

偏り自体は悪ではありませんが、「小粒な案件ばかり」「経営に通らない」といった慢性的な悩みの根が、実は入り口の偏りにあると分かれば、次に試すべき型が見えてきます。

入り口は違っても、出口は同じ

4分類を使ううえで、最も大切なことをお伝えします。

どの型から入っても、最後は必ず「顧客課題」と「なぜ当社がやるのか(Why Company)」に接続しなければならない、ということです。

市場機会探索型で始めたなら、トレンドを顧客の具体的な課題まで落とし込む必要があります。技術アセット活用型で始めたなら、その技術がどの顧客の何を解決するのかに答える必要があります。

型は入り口の整理であって、出口の免除ではありません。
逆に言えば、出口さえ押さえれば、入り口はチームの状況に合わせて選んでよいのです。

おわりに

テーマ設定の議論が空中戦になるのは、参加者がそれぞれ別の型を前提に話しているからです。

まず「うちは今、どの型で探索しようとしているのか」を確認する。

それだけで、議論は噛み合い始めます。

4分類そのものがテーマを生むわけではありません。ただ、チームの目線を揃える道具としては、制度の側でも現場の側でも役に立ってきました。


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