はじめに
「うちのチームはアイデアが出なくて」
「自分にはひらめきの才能がない」
テーマ探索やアイデア創出の場面で、よく聞くフレーズです。
ブレストしても沈黙が続き、出てくるのはどこかで聞いたような案ばかり・・・
「アイデアはセンスのある人のもの」という諦めムードが広がっていきます。
私はこれまで、大手電機メーカーなどでの新規事業制度の運営や、クライアント起業への支援を通じて、この「アイデアが出ない問題」に向き合ってきました。
結論を先に申し上げます。
アイデア創出は、センスではなく“分解の技術”です。
ひらめきを待つのではなく、問いを分解して埋めていく。
この技術は、誰でも身につけられます。
「何かいいアイデアない?」が沈黙を生む理由
ブレストが沈黙するのは、参加者の発想力が乏しいからではありません。
問いが大きすぎるからです。
「何かいいアイデアはないか」という問いは、答えの探索範囲が無限です。
人間の頭は、無限の空間からは何も取り出せません。
逆に、「深夜のワンオペ育児中の親が、片手しか使えない場面で困っていることは何か」と問われれば、誰でも何かしら考え始められます。
問いが具体的になるほど、頭は動くのです。
つまり、アイデアが出ないチームに必要なのは、発想力の研修ではなく、大きな問いを答えられるサイズまで分解する技術です。
分解の型:「誰の×どんな場面の×どんな”不”を×何で解決するか」
私がお勧めしている分解の型は、シンプルです。
アイデアを、
「誰の」
「どんな場面・シーンの」
「どんな”不”(不満・不便・不安)を」
「何で解決するか」
の四つの要素に分け、一つずつ埋めていくのです。
このとき、最初に埋めるべきは「誰の」です。
それも、属性のラベルではなく、具体的な人物像まで踏み込みます。
「30代女性向け」では、まだ誰の顔も浮かんでいません。
「時短勤務で復職したばかりで、平日の夕方に時間との戦いをしている会社員の親」まで具体化して初めて、その人の一日、その人の困りごとが想像できるようになります。
人物が具体的になれば、「どんな場面」は自然に見えてきます。
場面が見えれば、「どんな不」が挙がります。
そして不が具体的なら、解決策の候補は複数出てきます。
つまりこの型は、発想の飛躍を求めず、観察と想像を一段ずつ積む設計になっているのです。
ひらめきに見えるアイデアの多くは、実はこの分解を頭の中で高速にやっている人の産物だと、私は考えています。
分解と組み合わせで、選択肢を広げる
分解には、もう一つの使い方があります。
要素の組み合わせを意図的にずらして、発想の範囲を広げるのです。
たとえば、「誰の」を固定して「場面」をずらす。
同じ顧客の朝・昼・夜、仕事・家庭・移動中と場面を動かせば、同じ人に対する別の機会が見えてきます。
逆に「不」を固定して「誰の」をずらせば、同じ課題を抱える別の顧客層、つまり市場の広がりが見えてきます。
自社の技術を軸に「誰に使えるか」を掛け合わせていく方法も有効です。
私が関わった技術の用途探索でも、技術×顧客候補の組み合わせ表を作って一つずつ検討していました。
大切なのは、これらをチームの共同作業にすることです。
分解の型が共有されていれば、ブレストは「センスのある人の独演会」ではなく、「表の空欄を全員で埋める作業」に変わります。
アイデアの量は、才能の総和ではなく、分解の細かさで決まるのです。
おわりに
「アイデアが出ない」と感じたら、それは才能の限界ではなく、問いのサイズが大きすぎるサインです。
誰の、どんな場面の、どんな不を、何で解決するか。
四つに分解し、具体的な人物から埋めていく。
この技術を身につけたチームは、ひらめきを待つチームより、確実に、そして再現性を持ってアイデアを生み出し続けます。
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